第90回アカデミー賞
【振り返ろう、過去のアカデミー賞】第二弾!!!
前回に続けて、第90回を見ていきましょう。
↓↓オスカー予想全般に共通する部分はこちらを参考にしてみてください。↓↓
aoimujintoblueisland.hatenablog.com
第90回アカデミー賞の最大のポイントは、
「女性が主役の映画たち!」です。
作品賞
<その他ノミネート有力候補>
- アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダル
- フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法
- ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ
- マッドバウンド 哀しき友情
- モリーズ・ゲーム
- ブレードランナー 2049
- ベイビー・ドライバー
- ディザスター・アーティスト
...etc.
ノミネート
ノミネート段階の驚きは『ファントム・スレッド』が多くのカテゴリーで、突然浮上したことでしょう。
おそらく『ファントム・スレッド』は公開がかなり遅かったので、前哨戦段階では観てる人が単純に少なかったのかなと思います。
ポール・トーマス・アンダーソン監督とダニエル・デイ=ルイスのネームバリューはもちろん、映画自体の評価の高さもすごかったのでね。
一方で『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』は前哨戦で批評家に愛され絶好調ながら、小品すぎたのか、作品賞には候補入りできませんでした。
『アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダル』は後半一気に勢いをつけてきましたが、あと一歩というところで届かず。
しかしながら、演技賞や編集賞ではノミネートされています。
今年は何と言っても「女性が主人公の映画が多かった」印象です。
ハリウッドは未だ白人男性社会である中で、女性が主人公の映画が作品賞にノミネートされることは多くはありません。
しかしながら今年は、『レディ・バード』『ペンダゴン・ペーパーズ 最高機密文書』『シェイプ・オブ・ウォーター』『スリー・ビルボード』と、女性の主人公が登場する作品が非常に多く作品賞にノミネートされています。
また主演男優賞でも触れますが、セクハラやDVなどがしっかりと問題視されてきたことが影響を与えたのも、この年の特徴です。
受賞
見事作品賞を受賞したのは...
これはほぼ予想通りだったかな?
『シェイプ・オブ・ウォーター』(本命) vs.『スリー・ビルボード』(対抗)
という見方が強く、最後は『スリー・ビルボード』を予想している人も多かったですね。
今回『シェイプ・オブ・ウォーター』が受賞したことによるポイントは以下の2つです。
- 人種や性別など、「多様性」を描いた物語
- モンスター系ファンタジー映画が作品賞という快挙
1.人種や性別など、「多様性」を描いた物語
今年のポイントに挙げた「女性が主人公の映画」の部分もこれに当てはまるところだと思います。
他にも『君の名前で僕を呼んで』では同性愛をテーマにしていますし、『レディ・バード』『スリー・ビルボード』では差別が顕在化しにくい田舎を舞台にしているのもポイントだと思います。
もちろん『シェイプ・オブ・ウォーター』にも「多様性」が描かれています。
言葉が話せない女性、黒人女性、ゲイの隣人、そして半魚人。
これはまさに今の時代を象徴しているかのようです。
2.モンスター系ファンタジー映画が作品賞という快挙
『シェイプ・オブ・ウォーター』は一種の怪獣映画(?)と言えます。
まさにギレルモ・デル・トロ監督の映画という感じのファンタジー要素の強い映画です。
こういう作風の映画が主要部門で受賞するというのは珍しいことで、これは大きな快挙と言えるでしょう。
作品賞ノミネート作品を一挙紹介
Call Me by Your Name『君の名前で僕を呼んで』
監督:ルカ・グァダニーノ
- ティモシー・シャラメとアーミー・ハマーが紡ぐ一夏の思い出。
- 今までの同性愛を描いた映画とやや違い、純粋なラブストーリーとしての要素が多め。
- とにかく美しい映像。街並みや色使いの美しさをとにかく堪能できる、素晴らしい作品と大絶賛!
美しい街に最高に溶け込む二人の愛が、本当に感動的。この作品、脳裏から離れない!
Darkest Hour『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』
監督:ジョー・ライト
- 『プライドと偏見』『つぐない』のジョー・ライト監督による作品。
- ゲイリー・オールドマンのいつも通り最高の演技が観れる一本。見事主演男優賞獲得!
- メイクを担当したのはカズ・ヒロさん。本当にメイクか?と疑うほどの完成度に息をのむ。
裏側でこういうことが行われていたという歴史を映画で感じれただけでも満足、最高。
Dunkirk『ダンケルク』
監督:クリストファー・ノーラン
- あのクリストファー・ノーラン監督の作品。彼の中では一番オスカー好みかも。
- ダンケルク大撤退の現場の方を描いている。『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』と奇しくも同じ年に公開。
- リアルにこだわった圧倒的映像。CGでは誤魔化さない素晴らしい魂!
ノーランにしては珍しいタイプの映画だけど、常に心がざわざわするのは彼ならでは。
Get Out『ゲット・アウト』
監督:ジョーダン・ピール
- ホラーという娯楽映画にして作品賞候補という快挙!年始め公開という不利な条件も吹き飛ばす大ヒット。
- 現代に重要なテーマをこのような形で描くなんて...。そしてそれを見事に成功させるジョーダン・ピールの手腕に驚愕。
- 想像の斜め上をいく展開。ユーモアも面白い。
Lady Bird『レディ・バード』
監督:グレタ・ガーウィグ
- 今注目の監督さん、グレタ・ガーウィグの作品。俳優としてではなく単独監督としての映画はこれは初。
- シアーシャ・ローナン、ローリー・メトカーフ親子の素晴らしい演技に心引き込まれること間違いなし。
- ティーンの子の恋や友情、親子関係などのあれこれをビターかつコメディーに。
思っていた以上にほろ苦くて、でも甘くて...。こういうテイストの青春映画大好物!
Phantom Thread『ファントム・スレッド』
- 突然の浮上。むしろ当然の浮上?あのポール・トーマス・アンダーソン監督の作品。
- 主演はダニエル・デイ=ルイス。今更説明する必要がない名優の引退作!
- 単なる恋愛ものと侮ってはダメ。官能的であってどこか恐ろしい一面を持つ作品。
何か人間の中にある怪物的部分を感じて、しかしそれは考えると他人事ではない気も...。
The Post『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』
- スティーヴン・スピルバーグ監督の社会派映画の最新作!
- ベトナム戦争に関する機密文書を暴露するジャーナリストらの物語。
- 演技陣がなんともまぁ豪華。トム・ハンクスにメリル・ストリープ。演技はもちろん最高級の味わい。
社会派ドラマではあるものの、全く飽きずに観れてしまった。これが監督の技量ですな。
The Shape of Water『シェイプ・オブ・ウォーター』
監督:ギレルモ・デル・トロ
- ギレルモ・デル・トロらしい魅惑的な映像美、惹きつけられる物語。
- 多様性が叫ばれる今だからこそ観たい作品。サリー・ホーキンスの言葉を使わない演技にも注目。
- ファンタジーにして見事作品賞受賞!
ファンタジーとはいえ、かなり現実的な性や暗さを感じ、心をガチッと掴まれた...。
Three Billboards Outside Ebbing, Missouri『スリー・ビルボード』
監督:マーティン・マクドナー
- 『セブン・サイコパス』のマーティン・マクドナー監督による作品。独特の皮肉的ユーモアが満載。
- 人間同士がぶつかりあい歪な関係になり、人の多面性をあぶり出していく映画。
- フランシス・マクドーマンドの無表情に秘める様々な表情、サム・ロックウェルの心情変化、ウディ・ハレルソンの出演時間が短いながらの存在感..。.俳優陣がとにかく全員良い!
人間のグレーの部分や多面的な部分をあまりにも上手く描いている。ラストにも拍手。
監督賞
よくよく考えると対抗の『スリー・ビルボード』のマーティン・マクドナーが候補漏れしている時点で、『シェイプ・オブ・ウォーター』の作品賞が見えていたのかもしれません。
『レディ・バード』からグレタ・ガーウィグが女性監督としてノミネートされているのも注目でした。
女性どうこう〜という括りが嫌な方もいると思いますが、実際女性監督がノミネートされるこうは珍しく、今後変わっていくことを願うばかりです。
受賞はギレルモ・デル・トロということで、キュアロン、イニャリトゥに続き、メキシコ人監督が受賞しました。
主演男優賞
- ティモシー・シャラメ(君の名前で僕を呼んで)
- ダニエル・デイ=ルイス(ファントム・スレッド)
- ダニエル・カルーヤ(ゲット・アウト)
- ゲイリー・オールドマン(ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男)
- デンゼル・ワシントン(ローマンという名の男 信念の行方)
フレッシュな俳優さんとベテラン名優さんたちの対決といった感じでしょうか。
特にデンゼル・ワシントンは『ローマンという名の男 信念の行方』を携えての参戦。他カテゴリーでは目立ってなかったものの、デンゼル・ワシントンの役作りも素晴らしいので是非。
今回受賞したのはゲイリー・オールドマン。
映画好きでなくても知っているであろう『レオン』で悪役を演じたことで知られる名優ですが、意外とアカデミー賞とは縁がなかった彼。
最初のノミネートを『裏切りのサーカス』でようやく手にした彼が、今回の大変身演技で見事受賞。嬉しかった映画ファンも多いのでは。
ちなみに彼はこの時元妻からDVを訴えられていて若干の不安要素はありました。
(ノミネート段階で有力候補の一人、『ディザスター・アーティスト』のジェームズ・フランコもセクハラ被害を訴えられ候補入りを逃しました。)
主演女優賞
- サリー・ホーキンス(シェイプ・オブ・ウォーター)
- フランシス・マクドーマンド(スリー・ビルボード)
- マーゴット・ロビー(アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダル)
- シアーシャ・ローナン(レディ・バード)
- メリル・ストリープ(ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書)
女性の年にふさわしい候補者。というのも、5人中4人が作品賞候補作からの候補なんです。
主演男優賞ではよく起こることなのですが 、主演女優賞で起こるのは今までの歴史から見ても珍しいことです。まさに「女性の年」。
そんな年に主演女優賞を獲得したのは、フランシス・マクドーマンド。2度目の受賞。
まぁすごい演技でしたものね。
彼女の受賞スピーチはこの年の式のハイライトの1つとも言える素晴らしいものでしたね。
助演男優賞
『スリー・ビルボード』からウディ・ハレルソンとサム・ロックウェルがダブルノミネート。
サム・ロックウェルは見事受賞。
この年端の助演男優賞は、前半戦は『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』のウィレム・デフォー、中盤からはサム・ロックウェルが強いという展開で非常に面白かったです。
クリストファー・プラマーは『ゲティ家の身代金』でノミネート。
実この作品、もともとケヴィン・スペイシーが配役されて撮り終わっていて、あのセクハラ事件発覚後数ヶ月でその部分をクリストファー・プラマーで撮り直すということをした作品。
すごっ...。
助演女優賞
- メアリー・J・ブライジ(マッドバウンド 哀しき友情)
- アリソン・ジャニー(アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダル)
- レスリー・マンヴィル(ファントム・スレッド)
- ローリー・メトカーフ(レディ・バード)
- オクタヴィア・スペンサー(シェイプ・オブ・ウォーター)
ノミネート段階でのサプライズは、『ファントム・スレッド』のレスリー・マンヴィル。
英国アカデミー賞に続き突然の浮上でした。
受賞はアリソン・ジャニー。
あのトーニャ・ハーディングの母親役で、観るものを震え上がらせる演技でしたね。
長編アニメーション賞
リメンバー・ミーが強い。
かつてのピクサーの素晴らしさを一気に取り戻している感じが最高です。
色使いも本当に綺麗で、これぞアニメーションという感じ!
国際長編映画賞
『ナチュラルウーマン』、素晴らしい映画でした。
世間の人々の冷たい部分を見せながら、光も見せる。傑作でした。
イスラエルの『運命は踊る』、ドイツの『女は二度決断する』などは涙を飲みました。
長編ドキュメンタリー賞
- Abucus: Small Enough to Jail
- 顔たち、ところどころ
- イカロス
- アレッポ 最後の男たち
- ストロング・アイランド
有力候補の1つだった、『Jane』がまさかの落選。
ここ最近、ドキュメンタリー賞は最有力候補が候補漏れしがちですね...。