2020/2021賞レース 前半戦
第93回アカデミー賞に向かって進んでいる賞レース。今回はここまでの賞レース前半戦をふまえて考察していきたいと思います。拙い文章ですが、お付き合いください。
作品賞
今、批評家関連の賞を快走しているのは『ノマドランド』『First Cow』『ザ・ファイブ・ブラッズ』あたりでしょうか。このうち、『ノマドランド』は作品賞候補確実ではないかと思います。『First Cow』は想像以上に強く、少々驚いていますが、確かに今年一番だという批評家も多かったので納得。ただし大衆受けの作品ではないので、オスカー候補は難しいかもしれません。
前哨戦前に強いと思われていたのは『ノマドランド』と『Mank マンク』『シカゴ7裁判』です。しかし驚くことに『Mank マンク』と『シカゴ7裁判』はそこまで勢いがないように思えます。大衆受けの良い『シカゴ7裁判』はまだ良いとして、万人受けのしない『Mank マンク』が批評家賞ですらあまり奮っていないのは若干不安です。ただ、それでもオスカーへのノミネートは固いとみてよく、有力作品であることには変わりありません。
その他『ミナリ』『The Father』『マ・レイニーのブラックボトム』などが確実に賞レースで成果を残しています。さらに『Promising Young Woman』『サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ』なども予想以上に健闘していて要注目でしょう。一方で『あの夜、マイアミで』が予想よりは勢いが抑えめな印象です。
『ソウルフル・ワールド』がアニメーション映画として久々に作品賞候補を狙っていますが、今のところはその勢いは感じません。しかし、今年最も大衆を引くつける作品の一つになるはずなので、作品賞候補、大いにあり得るでしょう。
その他まだ評価が出ていない作品として、『Judas and the Black Messiah』『The United States vs. Billie Holiday』『Cherry』『Malcolm & Marie』『ザ・ホワイトタイガー』などがあり、ここら辺の作品が急浮上する可能性もあるので、まだまだ目が離せません。
監督賞
今のところ完全に『ノマドランド』のクロエ・ジャオ監督の独壇場になっています。
他は、『Mank マンク』『シカゴ7裁判』『マ・レイニーのブラックボトム』『あの夜、マイアミで』『The Father』『ミナリ』『Promising Young Woman』等、作品賞有力作らが監督賞でも有力です。
主演女優賞
今、前哨戦前半で勢いがあるのは『マ・レイニーのブラックボトム』のヴィオラ・デイヴィス、『ノマドランド』のフランシス・マクドーマンド、『Promising Young Woman』のキャリー・マリガン、『Never Rarely Sometimes Always』のシドニー・フラニガンあたりでしょう。 この中でも、ヴィオラ・デイヴィス、フランシス・マクドーマンド、キャリー・マリガンがアカデミー賞でも有力です。シドニー・フラニガンはこの中でもかなり高評価で勢いがありますが、どうやら作品の大衆の受けが批評家ほどは高くなく、その点でマイナスになるかもしれません。
『私というパズル』のヴェネッサ・カービーも有力と言われていますが、今の所前哨戦では静かです。というのもこの作品は2021年の作品として認識されているようで、それが影響しているのでしょう。オスカーでは対象になるので、その辺りまでにはどんどん存在感を増していくでしょう。まだ評価の出ていない『The United States vs. Billie Holiday』のアンドラ・デイも要注目です。
主要男優賞
『マ・レイニーのブラックボトム』のチャドウィック・ボーズマン、『The Father』のアンソニー・ホプキンスが最も有力だとずっと言われていますが、確かにこの二人は前哨戦前半でも強さを発揮しています。ただし強いのはこの二人だけではなく『ザ・ファイブ・ブラッズ』のデルロイ・リンドー、『サウンド・オブ・メタル』のリズ・アーメッドもかなりの強さを発揮しています。この4人が現時点でのフロント・ランナーでしょう。
この4人を追いかけるように『ミナリ』のスティーヴン・ユァン、『Mank マンク』のゲイリー・オールドマンなどがどこまで追いつけるかが見所でしょう。
さらにいうと2021年公開のためまだ賞レースに現れていない『Judas and the Black Messiah』のラキース・スタンフィールドの急浮上にも要注意です。予告編でも演技のすごさが伝わってきたので。
助演女優賞
『続・ボラット』のマリア・バカローバ の猛進を予想できた人はいたでしょうか。いや、確かに評価されていた演技で批評家賞で少し顔を出すのではと言われていましたが、ここまでとは。現時点では彼女と、『ミナリ』のユン・ヨジョンがフロントランナーです。
その他『Mank マンク』のアマンダ・セイフライド、『The Father』のオリヴィア・コールマンも予想通り強く、2021年作品の認識になっている『私というパズル』のエレン・バースティンも賞レース中盤から後半にかけて勢いが出てくるのではないでしょうか。『The Mauritanian』のジョディ・フォスターや『ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌』のグレン・クローズも大注目です。
助演男優賞
前哨戦前半では、『サウンド・オブ・メタル』のポール・レイシー、『あの夜、マイアミで』のレスリー・ オドム・Jr、『ザ・ファイブ・ブラッズ』のチャドウィック・ボーズマンらが強いと言えるでしょう。特にポール・レイシーは予想外であり嬉しいサプライズ。『サウンド・オブ・メタル』を観た方はわかると思いますが、本当に素晴らしい演技でした。この3人がそのまますんなり候補入りするかは不明ですが、有力なのは間違いないです。
その他『シカゴ7裁判』のサシャ・バロン・コーエン、マーク・ライランス、『Judas and the Black Messiah』のダニエル・カルーヤ、『Supernova』のスタンリー・トゥッチらも顔を出してくるでしょう。
長編アニメーション映画賞
『ソウルフル・ワールド』『ウルフウォーカー』『2分の1の魔法』『フェイフェイと月の冒険』あたりがオスカーでも顔を出すと思います。このうち『ソウルフル・ワールド』『ウルフウォーカー』は前哨戦でも非常に強いです。