第95回アカデミー賞 受賞最終予想
作品賞
- All Quiet on the Western Front『西部戦線異状なし』
- Avatar: The Way of Water『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』
- The Banshees of Inisherin『イニシェリン島の精霊』
- Elvis『エルヴィス』
- Everything Everywhere All at Once『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(予想)
- The Fabelmans『フェイブルマンズ』
- TÁR『TAR ター』
- Top Gun: Maverick『トップガン マーヴェリック』
- Triangle of Sadness『逆転のトライアングル』
- Women Talking『ウーマン・トーキング 私たちの選択』
ここ数年、作品賞はとても予想が難しい部門でした。しかし今年は久しぶりにある一本の作品が賞レースを独占。全米製作者組合賞(PGA)、全米俳優組合賞(SAG)、全米脚本家組合賞(WGA)、そして全米監督組合賞(DGA)、その全てで愛された作品が、そう、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』。メインキャストがアジア人ということだけではなく、マルチバースを使ってとことん暴れた独創的な一本であり、涙必須の家族ドラマでもあります。ゴールデングローブ賞と英国アカデミー賞こそとれなかったものの、最もオスカーに近いとされる各組合賞ではほぼ独占状態。これはどの分野の映画人をも虜にしているということ。ほぼ確実に作品賞を受賞すると思います。
そうなんです、エブエブに対抗しうる作品が本当に見つからない。英国アカデミー賞で旋風を巻き起こした『西部戦線異状なし』もオスカーで作品賞を受賞するにはBUZZ不足感。すでに作品賞を受賞している作品のリメイクというのも若干マイナスポイント。私一推しで、個人的にはとってほしいと思っている『イニシェリン島の精霊』もエブエブを倒すほどの勢いは感じられません。『フェイブルマンズ』に至っては完全に失速。『トップガン マーヴェリック』も幅広く票を集めそうですが、唯一の希望だったPGAを受賞できなかったのが大打撃。
ということでおそらくエブエブの作品賞は揺るぎないでしょう。強いていうならば、あまりにも独創的な世界観のせいで、一部の会員の票が見込めない可能性があることがやや気がかりでしょうか。特に作品賞は集計の性質上、一位票以外も重要になります。つまり賛否がくっきり分かれる作品よりも、皆が1位でなくとも2位や3位に選ぶ愛され作品が受賞する傾向があります。そうなると、エブエブはピンチに...。と言いたいとこですが、エブエブは十分愛され作品ですし、ジェイミー・リー・カーティスやミシェール・ヨー、ジェームズ・ホン、キー・ホイ・クァンとレジェンドが揃っていることもあり、どの年代の会員も安心して投票できそうです。あぁ本当は『イニシェリン島の精霊』にとってほしい...!
監督賞
- マーティン・マクドナー『イニシェリン島の精霊』
- ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(予想)
- スティーヴン・スピルバーグ『フェイブルマンズ』
- トッド・フィールド『TAR ター』
- リューベン・オストルンド『逆転のトライアングル』
全米監督組合賞ではダニエルズが受賞。英国アカデミー賞やゴールデングローブは逃したものの、それ以外の賞ではほぼ総ナメ。もともと受賞すると言われていたスティーヴン・スピルバーグを圧倒いう間に追い抜いてしまう勢いであり、このままオスカーもかっさらっていきそうな予感。スピルバーグは『シンドラーのリスト』『プライベート・ライアン』で既にこの部門を制していますし、ここは初受賞のダニエルズにいくのではと考えています。スピルバーグの『フェイブルマンズ』も本当に素晴らしかったのですが。
ダニエルズの前では、マーティン・マクドナーもトッド・フィールドも今回は受賞については難しそうです。個人的には、『スリー・ビルボード』での候補漏れのリベンジを果たしたマーティン・マクドナーにとってほしいのですが...。リューベン・オストルンドはノミネート自体が勝利。『フレンチアルプスで起きたこと』で話題を呼び、その後『ザ・スクエア 思いやりの聖域』で外国語映画賞を受賞したオストルンド、ようやく手にした監督賞ノミネートに大きな拍手を。
主演女優賞
- ケイト・ブランシェット『TAR ター』
- アナ・デ・アルマス『ブロンド』
- アンドレア・ライズボロー『To Leslie』
- ミシェル・ウィリアムズ『フェイブルマンズ』
- ミシェール・ヨー『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(予想)
アンドレア・ライズボローのキャンペーンや、ダニエル・デッドワイラーやヴィオラ・デイヴィスを抑えて候補入りしたアナ・デ・アルマスについてやや物議を醸している主演女優賞ですが、この部門の受賞の可能性があるのは、ケイト・ブランシェットかミシェール・ヨーの二人でしょう。
ケイト・ブランシェットもミシェール・ヨーもどちらも実在の人物を演じてはいないため、その点では比較はできません。またどちらも作品パワーは強く、その点で比較することも難しいでしょう。ちなみに、ゴールデングローブはドラマ部門とコメディ部門でそれぞれが受賞。その後Critics' Choiceと英国アカデミー賞ではケイト・ブランシェットがとり一気にフロントランナーに躍り出るも、最重要である全米俳優組合賞ではミシェール・ヨーが受賞。50/50とはまさにこのことで、本当にどちらに転ぶかわかりません。
データ的には、英国アカデミー賞よりも、全米俳優組合賞の方が合致率が高いのですが、実は接戦を繰り広げている演技部門に関しては開催時期がオスカーに最も近い英国アカデミー賞の方が信頼性が高いというデータがあります。つまり今回のようにバチバチの一騎打ちの場合、英国アカデミー賞の方がオスカーと一致する可能性が高いのです。そうするとやはりケイト・ブランシェットか...。
しかし今年の全米俳優組合賞を観た人ならわかると思うのですが、まぁエブエブの愛され具合が半端なく、助演女優賞を受賞したジェイミー・リー・カーティスがミシェール・ヨーの名前を会場の皆と叫び、また、ミシェール・ヨーが主演女優賞を受賞した時の盛り上がりも圧倒的でした。また今年は例年と違い、英国アカデミー賞よりも後に全米俳優組合賞が開催。そういう意味でも、スケジュール的にオスカーに開催日が近い全米俳優組合賞の結果の方がオスカーに近い気がします。また『ポリス・ストーリー3』『プロジェクトS』『グリーン・デスティニー』だけでなく、『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』『クレイジー・リッチ!』『シャン・チー/テン・リングスの伝説』などハリウッドの貢献度も高いのは大きな強みでしょう。
ケイト・ブランシェットは『アビエイター』と『ブルー・ジャスミン』すでにオスカーを2度受賞。もちろん演技が素晴らしければ、今までの回数は全く関係ないはずですが、ケイト・ブランシェットもミシェール・ヨーも、どちらも今年を代表する圧倒的なパフォーマンスを披露。どちらも素晴らしい、ということであれば、長年映画界を支えてきた、然し乍ら受賞経験のないミシェール・ヨーに流れがきている気がしてなりません。
主演男優賞
- オースティン・バトラー『エルヴィス』(予想)
- コリン・ファレル『イニシェリン島の精霊』
- ブレンダン・フレイザー『ザ・ホエール』
- ポール・メスカル『Aftersun』
- ビル・ナイ『生きる LIVING』
こちらも激しい一騎打ち。オースティン・バトラーとブレンダン・フレイザーが熾烈な戦いを繰り広げています。
オースティン・バトラーは英国アカデミー賞とゴールデン・グローブ賞を受賞。実在の人物、しかもエルヴィス・プレスリーを見事に演じ、初ノミネート。ただしキャリアの長いベテランが強い部門であり、オスカーはやや若手に厳しいことも多いため、それがどう影響するか。
一方でブレンダン・フレイザーはキャリアの長いベテラン。『恋のドッグファイト』『青春の輝き』『ゴッド・アンド・モンスター』『ハムナプトラ』『センター・オブ・ジ・アース』などで大スターとして活躍し、またその演技力も評価されてきたものの、長い間表舞台からは姿を消していた彼の、ビッグカムバック。『ザ・ホエール』がお披露目されるとたちまち受賞は決まりとの声は大きくなる一方。批評家系の賞ではコリン・ファレルにやや勢いを奪われるも、批評家最大の賞であるCritics' Choiceは見事受賞。全米俳優組合賞を受賞していることも強みで、毎度スピーチも感動的。
というわけで、どちらが受賞してもおかしくないのですが、なんとなくこの戦い、ショーン・ペンvsミッキー・ロークや、エディ・レッドメインvsマイケル・キートンを思い出しませんでしょうか。長いキャリアを持つベテランのカムバック、ミッキー・ロークやマイケル・キートンが受賞すると思われたものの、最終的にオスカーを持ち帰ったのは、実在の人物を演じたショーン・ペンやエディ・レッドメイン。また、作品力を考えても多くの部門にノミネートされた『エルヴィス』の方が、作品賞・脚色賞を逃した『ザ・ホエール』よりも強い気がするのです。それこそ「接戦の時は英国アカデミー賞が大きな影響力を持つ法則」が効いてくる気がするのです。
ということで、ここは主演女優賞とは逆の結論になりますが、オースティン・バトラーを予想。でもなぁ、個人的にブレンダン・フレイザーにとってほしい気持ちも強い...。そもそも一推しであるコリン・ファレルにもとってほしいし、ポール・メスカルもとても素晴らしかったし、ビル・ナイも好きな俳優だし...。あぁなんて素晴らしく予想が難しい部門なんでしょう。
助演女優賞
- アンジェラ・バセット『ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー』
- ホン・チャウ『ザ・ホエール』
- ケリー・コンドン『イニシェリン島の精霊』
- ジェイミー・リー・カーティス『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(予想)
- ステファニー・スー『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
今年は珍しくどの演技部門も予想が難しいのですが、一番難しいのはこの部門。簡単にいうと、アンジェラ・バセットとケリー・コンドンとジェイミー・リー・カーティスの三つ巴。誰がきてもおかしくないです。
批評家関連の賞で次々の受賞したのは『イニシェリン島の精霊』のケリー・コンドン。『終着駅 トルストイ最後の旅』『スリー・ビルボード』などに出演している女優さんで、今回が初ノミネート。『イニシェリン島の精霊』では見事な存在感で、コメディセンスとドラマティックなセンスを必要とする役柄を演じました。
然し乍ら重要賞が発表され始めると風向きは徐々に変わっていきました。そう、アンジェラ・バセットがゴールデングローブ賞と、批評家賞で最大のCritics' Choiceを受賞したのです。『TINA ティナ』で既にオスカーへの候補経験もあるベテラン。今年ももう彼女の年か、と誰もが思いました。
にもかかわらず、オスカー会員との重複率が高いとても重要な英国アカデミー賞と全米俳優組合賞はアンジェラ・バセットの手には渡りませんでした。英国アカデミー賞はアイルランド出身のケリー・コンドン、そして全米俳優組合賞はジェイミー・リー・カーティスが受賞したのです。そのスピーチでわかったのは、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』の俳優人気の高さだけでなく、ジェイミー・リー・カーティスがいかにリスペクトを集めているかでした。母は『サイコ』などのジャネット・リー、父は『お熱いのがお好き』『手錠のまゝの脱獄』のトニー・カーティスと、俳優一家に生まれたジェイミー・リー・カーティスは、20歳にして『ハロウィン』という今でも誰もが知るホラー映画の主演に抜擢。その後も『ザ・フォッグ』『プロムナイト』『大逆転』『ワンダとダイヤと優しい奴ら』『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』など、ホラー映画やコメディ映画で大活躍。もしかしたアンジェラ・バセット以上の功労賞を手にするかもしれません。
というわけで、今年はベテラン2人の対決に、ケリー・コンドンがどこまで食い込めるか、そういった賞レース展開。作品力を考えるとジェイミー・リー・カーティスがサプライズを起こしそうな気がしますが、果たして。
助演男優賞
- ブレンダン・グリーソン『イニシェリン島の精霊』
- ブライアン・タイリー・ヘンリー『その道の向こうに』
- ジャド・ハーシュ『フェイブルマンズ』
- バリー・コーガン『イニシェリン島の精霊』
- キー・ホイ・クァン『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(予想)
今年は混戦だらけの演技部門の中でも、この部門はほぼ決まりといっても良いかもしれません。そう、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のキー・ホイ・クァンが圧倒的に強いのです。
誰もが知る『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』『グーニーズ』にて存在感を放っていた子役スターだったキー・ホイ・クァンですが、その後は大きな役に出会うことがなかなか難し買ったそうなのですが、最近になり俳優業に復帰。武術指導を行なっていた経験をいかしたパフォーマンスは大変素晴らしく、受賞も納得でしょう。実際、全米俳優組合賞、ゴールデングローブ賞、Critics' Choice、そしてその他ほとんどの賞を独り占め。スピーチも毎度毎度涙が止まらない感動的なものばかり。今年はスピルバーグもノミネートされており、二人のツーショットもとても感動的。いろんな要素が彼の方を向いている気がします。
ただし100%と言い切れない要素も。英国アカデミー賞ではサプライズが起こっていて、『イニシェリン島の精霊』のバリー・コーガンが受賞したのです。『ダンケルク』『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』で強烈な印象を放ってきた若手が堂々の初ノミネート。より有力だったブレンダン・グリーソンも超えての受賞は衝撃的でした。
とはいえ接戦だった時の予想に英国アカデミー賞はとても有効ですが、この部門のように、圧勝している候補者が一人いる場合は、どちらかというとそこまで影響力のないのが英国アカデミー賞。もちろん演技が素晴らしいのが大前提ですが、バリー・コーガンがアイルランド出身ということも大きく影響したとも考えられます。この部門はキー・ホイ・クァンで決まり、なはずです。
脚本賞
- The Banshees of Inisherin『イニシェリン島の精霊』
- Everything Everywhere All at Once『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(予想)
- The Fabelmans『フェイブルマンズ』
- TÁR『TAR ター』
- Triangle of Sadness『逆転のトライアングル』
この部門もやや難しいところ。『イニシェリン島の精霊』『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』の2本が熾烈な争いを繰り広げています。全米脚本家組合賞(WGA)では『イニシェリン島の精霊』が対象外だったため、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が危なげなく受賞。またCritics' Choiceこと放送映画批評家協会賞も受賞しています。一方で、『イニシェリン島の精霊』は英国アカデミー賞とゴールデングローブ賞を受賞しました。
好きな『イニシェリン島の精霊』を無冠で予想するわけにはいかないのですが、ここはあくまで予想の場。なんとなく『エブエブ』に流れがきているような気がしていますので、ここは『エブエブ』を予想します。同じマクドナーの『スリー・ビルボード』と『ゲット・アウト』の戦いにも非常に似ている気がするし...。
脚色賞
この部門も一騎打ち。『西部戦線異状なし』『ウーマン・トーキング 私たちの選択』の2本の戦いです。ただし、2本が同時にノミネートされている前哨戦が少なく、基本的にどちらかが候補漏れしていて、していない方が受賞、のパターンが多いので、単純に前哨戦を参考にできないのが難しいところ。
さて単純に作品パワーでいうと『西部戦線異状なし』が圧倒的に強いです。『西部戦線異状なし』が9部門ノミネートに対して、『ウーマン・トーキング 私たちの選択』が2部門ノミネートのみ。『ウーマン・トーキング 私たちの選択』は評価の高さが嘘のような冷遇っぷりで、前哨戦で強かったとはいえやや不安が残ります。
とはいえ、会話劇であり、シャープな脚本が評価されそうなのは間違いなく『ウーマン・トーキング 私たちの選択』。サラ・ポーリーにとってほしいという希望も含めて、『ウーマン・トーキング 私たちの選択』を予想します。
撮影賞
さてこの部門はノミネートの段階で大きなサプライズがありました。前哨戦でこの部門を独占していた『トップガン マーヴェリック』の候補漏れです。その瞬間に誰もが、じゃあどの作品がとるんだよ、と思ったに違いありません。
『トップガン マーヴェリック』が不在の今、受賞の可能性が非常に高いのは『西部戦線異状なし』です。ドイツで撮られた戦争映画。その撮影技術は素人目から見てもわかるもの。ただし不安要素としては、全米撮影監督組合賞は『エルヴィス』に渡ったことです。全米撮影監督組合賞には『西部戦線異状なし』はノミネートすらされていないので、単純比較はできませんが、大きな影響力のある賞であることは間違いないと思います。『エルヴィス』の撮影監督であるマンディ・ウォーカーは、オスカーもとれば撮影賞にて初の女性の受賞となります。
『西部戦線異状なし』も『エルヴィス』も共に大量ノミネートを獲得している作品で、作品パワーも十分。ここは個人的な映画のことのみで、『西部戦線異状なし』を推します。
編集賞
編集賞はとても重要な賞。基本的に音響賞と一致する可能性が高い賞ですが、音響賞のフロントランナーである『トップガン マーヴェリック』がとるのか...というと今年はそう単純ではなさそうです。
そうなんです、マルチバースのカオスな世界を見事に魅せた編集技術を披露した『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が英国アカデミー賞(他部門は逃したにもかかわらず、この部門だけは受賞した)、Critics' Choice、全米編集監督組合賞(ACE、Eddie)のコメディ部門を受賞。トップガンは主要賞としては、全米編集監督組合賞のドラマ部門を受賞したのみで、ここはエブエブに譲るしかないでしょう。
美術賞
この部門は『バビロン』を予想。ハリウッドを再現した美術はこの部門を制すという法則があり、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』『Mank マンク』に続くと思います。オスカーとの一致率が非常に高いCritics' Choiceを制しただけでなく、『西部戦線異状なし』が技術賞をとりまくった英国アカデミー賞でさえこの部門は『バビロン』にいったのはその強さの表れです。まぁ『バビロン』が作曲賞を逃した場合、美術賞のみの受賞というのはなんとなく違和感がないわけではないですが。
不安要素は『バビロン』の作品評価が大きく分かれていること。作品自体の評価と、技術部門はわけて考えたいところですが、人間が投票する賞ということでそうはいかないのが悲しいところ。そうなると『西部戦線異状なし』『エルヴィス』が対抗として上がってくるでしょう。
衣装デザイン賞
個人的にちょっと予想が難しいなと思っている部門です。最も合致率の高いCritics' Choiceは『ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー』が受賞。個人的にもブラックパンサーの衣装デザインは個性的で美しく素晴らしいと思っているのですが、とはいえ、続編(1作目はこの部門を受賞)であることや、1作目と違い作品賞にノミネートされていないのがややマイナスに働くのではと思っています。
そうすると組合賞のピリオド部門を受賞し、英国アカデミー賞を制した『エルヴィス』が強いのではないのでしょうか。しかも『エルヴィス』は作品賞も候補入り。なんとなくここを受賞するパワーを感じます。
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』がとったらサプライズですが、その可能性は捨てきれないですし、個人的に応援している『ミセス・ハリス、パリへ行く』にもとってほしい想いもあり、ちょっと予想が難しい部門です。
メイクアップ&ヘアスタイリング賞
この部門は『ザ・ホエール』か『エルヴィス』かの2択かと思われます。そして作品賞にもノミネートされている『エルヴィス』が強いのではないでしょうか。
そしてこの部門のもう一つの特徴は、主演男優賞・主演女優賞とリンクしているということです。とすると、オースティン・バトラーを予想している私としては『エルヴィス』を予想する他ないのです。逆にいえば、『ザ・ホエール』がこの部門を受賞すれば、主演男優賞はブレンダン・フレイザーになる可能性がグッと高まるということ。この部門の結果次第で、主演男優賞の結果もなんとなく占えるというのが面白いところです。
音響賞
撮影賞は候補漏れした『トップガン マーヴェリック』ですが、この部門は受賞できるかなと思っています。
対抗は英国アカデミー賞を制した『西部戦線異状なし』。かなり勢いのある作品なので、この部門もかっさらっていきそうですが、劇場公開を大々的に行った『トップガン マーヴェリック』が一歩有利ではないかと思っています。やはり音響の良さは劇場にいってわかるというものですからね!
視覚効果賞
この部門は『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』の独占状態。なんといっても長年かけて研究したキャメロンの執念が込められた作品であり、この部門を落とすのは考えづらいです。
なぜかオスカーは視覚効果賞についてアメコミ映画に非常に厳しく、『ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー』の線はないかなと思います。ですので、対抗をあげるとしたら『西部戦線異状なし』かなと思います。
作曲賞
『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』や『ウーマン・トーキング 私たちの選択』が候補漏れをしているため、この部門は『バビロン』のジャスティン・ハーウィッツか、『西部戦線異状なし』のフォルカー・ベルテルマンかなと思います。
作曲賞は当初『バビロン』が圧倒的と言われていました。作品が好きじゃない人も、スコアは評価している人がほとんどだったからです。しかしながら前哨戦を見ると、英国アカデミー賞は『西部戦線異状なし』、Critics' Choiceはここではノミネートされていない『TAR ター』と意外と結果はわれ、主要賞の中では『バビロン』はゴールデングローブ賞を受賞するに留まりました。となると、ここは『西部戦線異状なし』のサプライズがあるのではと思っています。でも、『バビロン』が美術賞だけ受賞というのもおかしな気が...。
長編アニメーション賞
- Guillermo del Toro's Pinocchio『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』(予想)
- Marcel the Shell with Shoes On
- Puss in Boots: The Last Wish『長ぐつをはいたネコと9つの命』
- The Sea Beast『ジェイコブと海の怪物』
- Turning Red『私ときどきレッサーパンダ』
この部門は危うげなく『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』がとるでしょう。『Marcel the Shell with Shoes On』は批評家系の賞で圧倒的な強さを発揮してましたが、ギレルモ・デル・トロを負かすほどの勢いはないかと思います。『私ときどきレッサーパンダ』のサプライズも捨て切れませんが、今年はギレルモ・デル・トロで決まりでしょう。
国際長編映画賞
『別れる決心』が候補漏れ、『RRR』はそもそもインド代表に選ばれず、ということで、ここは作品賞を始め大量ノミネートされている『西部戦線異状なし』以外はないのではないでしょうか。ゴールデングローブ賞を取っている『アルゼンチン1985 歴史を変えた裁判』が不気味ですが、さすがに作品賞候補になっている作品は倒せないはずです。
長編ドキュメンタリー賞
- All that Breathes
- All the Beauty and the Bloodshed
- Fire of Love『ファイアー・オブ・ラブ 火山に人生を捧げた夫婦』
- A House Made of Splinters
- Navalny『ナワリヌイ』(予想)
当初フロントランナーだった『All the Beauty and the Bloodshed』ですが、今は『ファイアー・オブ・ラブ 火山に人生を捧げた夫婦』『ナワリヌイ』の一騎打ちかと思います。そしてここにきて勢いが出ているのが『ナワリヌイ』。今のご時世にも見事にはまりますし、そういう意味でも、『ナワリヌイ』が受賞すると予想します。
歌曲賞
はい、これは希望も予想も『RRR』で。とったら嬉しすぎて踊り狂いそうです。レディー・ガガやリアーナなどスターも多くノミネートされてますが、"Naatu Naatu"がとらなくてどうするんですか。でしょ?
短編映画賞
- An Irish Goodbye
- Ivalu
- Le Pupille『無垢の瞳』(予想)
- Night Ride
- The Red Suitcase
短編アニメ賞
短編ドキュメンタリー賞
- The Elephant Whisperers『エレファント・ウィスパラー:聖なる象との絆』
- Haulout
- How Do You Measure a Year?
- The Martha Mitchell Effect『マーサ・ミッチェル 誰も信じなかった告発』
- Stranger at the Gate (予想)