4〜6月の新作映画を勝手にランキング
4〜6月に観た新作映画の個人的Top10をご紹介します。
とは言ってもしばらく映画館が開いていなかったですので、配信映画もやや多めなランキングになっています。
『はちどり』『SKIN/スキン』は7月になってから鑑賞できたので、7-9月のランキングの対象にする予定です。
Top10
1.Luce『ルース・エドガー』
今、観て欲しい映画という意味合いも込めて1位に。もちろん単純に作品としても素晴らしいです。
それぞれの決めつけや押し付けの理想が、非常に秀逸に浮き彫りになる演出。
決して、悪役やあからさまな差別が出てくるわけではないけれど、それぞれが型にはめ、はめられ崩れて行く姿は今の我々が考えなければいけないものなのかもしれないです。
しかしながらこの映画、シリアスなテーマを扱いつつも娯楽も高いのが特徴。
非常にスリリングで、おもわず身を乗り出すシーンも多数。
演技がまた良いのです。ナオミ・ワッツ、オクタヴィア・スペンサーはもちろんのこと、ケルヴィン・ハリソン・Jr.が良き。
特にラストは、この作品を物語っていると言える表情を見せてくれます。
彼は7月公開の『WAVES ウェイブス』にも出ているので、楽しみです。
決して何か明白な答えを示すような映画ではないですが、だからこそ観て考えて欲しい一本。
2.The Half of It『ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれから』
Netflixで鑑賞しました。想像以上に良かった!
アリス・ウー監督、天才かも。若干前の『素顔の私を見つめて…』でも高評価得ていたので楽しみにしていたのだけど、ここまでとは。
おそらくご自身の体験もかなり多く反映されているんだろうな。
作中、序盤に『カサブランカ』を観ているシーンが出てくるのが印象的。
途中他の映画をエリーとポールが観ながら話すシーン。これが後に素敵な形で活かされるのだから侮れない。
シーン一つ一つがすごくスッキリしているんだけど、どこか美しく大きな意味を持っているのがすごく素晴らしかったです。
俳優陣も皆素敵。
ほとんど存じ上げない方々なんだけど、観ていくうちに彼女たちのキャラクターにグッと引き込まれるほど魅力的でした。
3.Little Women『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』
第92回アカデミー作品賞候補、これでようやくコンプリートです!そしてこの作品も非常に面白かった!
今までもたくさん若草物語に触れる機会はあったのだけど、この映画にはいくつかの新たな解釈や、現代的な視点が加えられて見応えがありました。
まず、フローレンス・ピュー演じるエイミー。彼女は他の若草物語の中でも結構嫌われているキャラクターですが、今回はいかにして彼女がそうなったのか、そういう選択をしたのかなども描かれており、非常に新鮮でした。
またジョーの行き方を軸に置き、現代的な考え方を提示する一方でそれを押し付けない描き方も好印象でした。
基本的には4姉妹のすべての価値観を否定することなく、「価値観の多様性」を描いたことは非常にスマートな印象でした。
ラストですが、あれはおそらくいくつかの解釈ができると思います。僕はジョーが揺れ動きながらも意志を貫くのかなと思っているので、ラストシーンは「小説の中身」だと解釈しました。
4.Da 5 Bloods『ザ・ファイブ・ブラッズ』
Netflixで視聴。最初から最後まで、しっかりとスパイク・リーの味がする傑作でした。
序盤から実際の映像をじっくりみせ、ある意味この映画で言いたいことを宣言。その後も時系列などを複雑にしながら、そのテーマに光を当てて続けています。
この映画で僕の心に響いたのは、差別の複雑性をあぶり出していたこと。
黒人、白人、ベトナム人などを対等な目線で描きながらもその苦悩の違いを忘れず、さらに踏み込んでそれぞれのコミュニティでの実態も明かす演出。
立場によって加害者であり被害者でもあるという、差別の根底にある複雑さをここまで描いている映画というのは珍しいのではないでしょうか。
これを観て、複雑だからと諦めるか、それに立ち向かうかは、我々はこれを機に考えるべきかもしれません。
演技陣ももちろん大健闘。
やっぱりデルロイ・リンドーがすごく良かったなぁ...。後半にかけるに連れずっと不安定だったものがいよいよ崩れていくあたりの表現も素晴らしかった。『サイダーハウス・ルール』に続き良い演技を拝見できました。
5.Pain and Glory『ペイン・アンド・グローリー』
ペドロ・アルモドバル監督は僕が信頼している監督さんの一人で、 『ボルベール〈帰郷〉』なんかは個人的に思い出深い一本。
今回は彼の作品の中でも、最もパーソナルな香りがする一本。それもそのはず、監督自身の半自伝的な作品なのだから。
幼少期の思い出、母との関係、切ない恋...
これらは文字面だけで見ると非常によく語られるテーマではあるけれど、それぞれに監督自身の思いが混ぜられ輝く点となり、それが線となってすっと心に入ってきます。
アントニオ・バンデラスがペドロ・アルモドバル監督作品で初ノミネートに輝いたのは本当に感慨深いですね。
本当に今まで以上に繊細で素晴らしい演技を披露していて、本当に感動しました。
ペネロペ・クルスも本当にはまっていて、いつものように自然との親和性が非常に高い実力派だなと感じました。
6.Wild Rose『ワイルド・ローズ』
ジェシー・バックリー、今後要注目。いや僕が言わなくても皆注目しているだろうけども...笑
夢を追うことって美しくて素晴らしくて、だけど苦くて辛くて。
そこにそれぞれの事情も関わってくるのだから、またその中でもがいてもがいて。それなのに諦めきれない。彼女の場合はシングルマザーである点が一つの葛藤を生み出していました。
とてもリアル。
そんな複雑な感情がひしひしと伝わってきて、目頭が...。もちろん僕はシングルマザーの大変さを実感しているわけではないので、想像に限られたものですが。
そしてその主人公を演じたのが、ジェシー・バックリー。演技はもちろんのこと、歌声もすごく良い。
単純に上手いだけでなく、この映画を象徴するような表情と歌声。素晴らしかった。
次はチャーリー・カウフマンの『I'm Thinking of Ending Things』に出演するらしいので、楽しみですね!
7.Honeyland『ハニーランド 永遠の谷』
北マケドニアのドキュメンタリー映画です。第92回アカデミー賞で国際長編映画賞と長編ドキュメンタリー賞に同時ノミネートされた作品。
やっぱりドキュメンタリーをみると、自分が普段触れることのない世界を垣間見れるというか、それだけでも「観てよかったなぁ〜」って思えます。
もちろんその初めて知る世界を通じて、その生き方や社会の課題を自分ごととして考えてみる機会にもなるので、ドキュメンタリー映画の楽しみ方は非常に幅広いと思います。
この作品は、ある養蜂家の方のドキュメンタリー。
感じた印象は、現実は小説より奇(?)なり。と言っても不思議というよりかは、あまりにもドラマチックすぎて、ちょっと衝撃でした。
本当に語彙力なくて表現しづらいけど、観終わって観てよかったと純粋に思えた一本でした。
普段ドキュメンタリー観ない人でもおすすめするかも。
8.The Willoughbys 『ウィロビー家の子どもたち』
Netflixにて鑑賞。
アニメーション作品で、結構どぎつい作品。
正直両親にはイライラしすぎて、ぎゅっと手を握りしめる部分もあったけど、全体を通して描かれるテーマというのは、明るめ。
ストーリーもかなり観やすく進む部分もあり、きついけど楽しく観れたっていうのが最終的な印象。
おそらく喜怒哀楽がしっかりと画面にくっきりと浮かび上がっているからかも。
映像に関しても非常に不思議な感じが漂っていて、それを眺めているだけでも個人的には楽しかったです。
アニメーションのテイストが、この作品・このテーマをうまく紡いでいるのも好印象。
ぜひお家で一度でも良いから観て欲しいです。
ちょっとだけ心の準備をするのを忘れずに。
9.Harriet『ハリエット』
奴隷解放運動家であるハリエット・タブマンの物語。
一言でいうと、力強い、そんな作品。
「素晴らしいが型にはまっていて驚きは少ない」と言う評価もよくわかるんだけど、改めてこの歴史を知ると、やっぱり衝撃的な作品でした。
歴史の重要な部分、そして今後も忘れてはいけない歴史、それを非常に丁寧に描いていて一見する価値の高い作品だと感じました。
ハリエットを演じた、シンシア・エリヴォが素晴らしい。
迫真の演技をみせていて、本当に引き込まれました。EGOTの一員になるのもすぐかもしれないですね!今後も楽しみです。
音楽がまた良い。
オスカーにもノミネートされた『Stand Up』。頭にすごい残る...。歌声も力強い。
授賞式でのパフォーマンスにも心うたれました。
10.Good Boys『グッド・ボーイズ』
まぁかなりお下品なネタが多めの作品ではあるけど、それだけでは終わらない素晴らしさを感じた映画でした。
そもそも子供がメインキャラクターとして出ているにもかかわらず、かなり大人のジョークの連続。
おばかコメディの面も強いけど、意外とハートフルで素敵な脚本には拍手を送りたくなりました。
そしてキャスト陣も大貢献。
特に今大注目のジェイコブ・トレンブレイをはじめとして、ブラディ・ヌーン、キース・L・ウィリアムスら皆非常に素晴らしい演技。
彼らの演技が、単にお下品なコメディで終わらせなかったと言っても良いかも。
子供と観に行ける映画ではないけど、大人が笑ってほっこりするには良い作品だと感じました。
その他観た作品など、まとめ
『ソニック・ザ・ムービー』『デッド・ドント・ダイ』『ANNA/アナ』『ラブバード』『泣きたい私は猫をかぶる』『お名前はアドルフ?』『その手に触れるまで』『タイラー・レイク -命の奪還-』などなど素敵な作品、独特な作品に出会えました。
他にも、『ドクター・ドリトル』『エジソンズ・ゲーム』『ランボー ラスト・ブラッド』『ポップスター』『ザ・ブック・オブ・ヘンリー』、そして実写版『わんわん物語』も鑑賞。
やっぱり映画って楽しい!!好きな作品も苦手な作品も、どっちだって映画を観るって体験だけで個人的には楽しめてしまいます。
ではまた次回!!
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2020年1〜3月の個人的Top10はこちら↓↓↓