第91回アカデミー賞
さて、初の試み、【振り返ろう、過去のアカデミー賞】(ひねりのない名前)
今回は試しに、第92回からいちばん最近の第91回を振り返ります。
↓↓オスカー予想全般に共通する部分はこちらを参考にしてみてください。↓↓
aoimujintoblueisland.hatenablog.com
第91回アカデミー賞の最大のポイントは、
「配信映画に最高の名誉を与えるのか?」です。
作品賞
- ブラックパンサー
- ブラック・クランズマン
- ボヘミアン・ラプソディ
- 女王陛下のお気に入り
- グリーンブック
- ROMA ローマ
- アリー スター誕生
- バイス
<その他ノミネート有力候補>
- ビール・ストリートの恋人たち
- ファースト・マン
- メリー・ポピンズ リターンズ
- クワイエット・プレイス
- エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ
- ある女流作家の罪と罰
- 魂のゆくえ
- クレイジー・リッチ!
...etc.
ノミネート
ノミネート段階では大波乱というのはなかったと思います。
とはいえ、驚きの点は何点かありました。
- 当落線上にあった『ビール・ストリートの恋人たち』の候補もれ
- 評価が低めだった『ボヘミアン・ラプソディ』が勢いのまま候補入り
特に、『ボヘミアン・ラプソディ』のゴールデン・グローブ賞後の勢いは凄かったです。
批評家の評価が芳しくなく賞レース後退
→ラミ・マレックの主演男優候補を噂する声が
→興行的に大成功!!!(特に日本)
→ゴールデングローブでドラマ部門作品賞を、まさかのサプライズ受賞!
→批評家の評価の低さを吹き飛ばし、作品賞ノミネート!!!
アカデミー賞とゴールデン・グローブ賞では投票者が異なりますが、賞レースを変える間接的影響力は持っていることが証明された事例と言えるでしょう。
ゴールデン・グローブ賞の良くも悪くも大衆よりなテイストが反映された結果と言えます。
受賞
見事作品賞を受賞したのは...
グリーンブック!!!
これは半分驚き、半分予想通りといった結果。
何と言ってもこの年は
『ROMA ローマ』(本命) vs.『グリーンブック』(対抗)
という見方が強かったので。
第91回のアカデミー賞のテーマの一つは間違いなく「配信映画を映画として認めるか」だったと思います。
『ROMA ローマ』はご存知の通りNetflix映画。エントリー基準を満たすため、ロサンゼルスの劇場で限定公開していたものの、大多数は配信で観ていたはず。
それでも、アカデミー賞本命に躍り出たのは評価が著しく高かったことによると思います。
しかしながら、最後はグリーンブックに敗れてしまいました。
個人的に考えた理由は以下の通りです。
- 配信映画に対する単純なアレルギー
- 劇場用に作られた『ROMA ローマ』の魅力が配信では最大限に伝わらなかった
- 受賞決定の特殊な投票方法・選出方法によるもの
1.配信映画に対する単純なアレルギー
まず一つに、単純に配信映画を作品賞に選ぶことに抵抗があったのではないでしょうか。
エントリーのために申しわけ程度に限定公開して、あとは配信するのが配信映画のスタイルです。スティーヴン・スピルバーグ監督などが抵抗を示すのも無理はないでしょう。
テレビ用の映画などはエミー賞の対象になっており、そちらを狙えばいいのに...という考えもあるでしょう。
しかしながら、Netflixとしては映画最高峰の賞、アカデミー賞が欲しいのではないでしょうか。
2.劇場用に作られた『ROMA ローマ』の魅力が配信では最大限に伝わらなかった
『ROMA ローマ』は映画館で大画面、充実の音響環境での鑑賞が最適だったのも大きかったかもしれません。
アルフォンソ・キュアロンも劇場公開を念頭に入れながら映画を作っていたのではないでしょうか。これは劇場でこの映画を観た人ならなんとなく感じていたと思います。
おそらくスマホやテレビでの環境では『ROMA ローマ』の全ての魅力を感じることが難しかったのかもしれません。
3.受賞決定の特殊な投票方法・選出方法によるもの
アカデミー賞の作品賞は他のカテゴリーにない特殊な選出方法を用いています。
詳しいことは説明が難しいので省きますが、気になった方は調べてみてください。(機会があれば記事にします!)
簡単に結論をいうと、この方法では賛否両論が分かれすぎているものは選ばれにくいのです。
『ラ・ラ・ランド』vs.『ムーンライト』や『ソーシャル・ネットワーク』vs.『英国王のスピーチ』もその例だと思います。
『ROMA ローマ』は非常に高い評価を得た一方、「配信映画にオスカーを与えるか!」という会員は下位の方に投票したと思うのです。
それにより、評価はまずまずだったものの、皆の心を暖かく満たした『グリーンブック』が受賞したと思うのです。(一位ではなくとも、二−四位くらいに入れた人は多そう。)
それでもNetflixなどの勢いが止まらないのは、どうしてもチャレンジのしやすい環境だからではないでしょうか。
そもそも劇場で興行にかけるものと、配信スタイルとではビジネスモデルが大きく異なります。
興行にかけずにお金を回収できる配信スタイルでは、普段ならGOサインの出しづらい映画も、より作りやすくなるのだと思います。
だからこそ、マーティン・スコセッシ、スパイク・リー、アルフォンソ・キュアロン、デヴィット・フィンチャーなどの名監督がNetflixと手を組み映画を作っていると言えるのでしょう。
作品賞ノミネート作品を一挙紹介
Black Panther『ブラックパンサー』
監督:ライアン・クーグラー
- アメコミ映画史上初、作品賞に候補入り!
- 監督は『フルートベール駅で』『クリード チャンプを継ぐ男』で話題沸騰のライアン・クーグラー監督。
- 単なる娯楽映画の枠にとらわれない、今だからこその充実なストーリー。
アメコミ映画の中で一番とまでは言わないまでも、想像以上に味わい深いストーリーに驚き!
BlacKkKlansman『ブラック・クランズマン』
監督:スパイク・リー
- 巨匠、スパイク・リー作品。初めて監督賞候補にも!
- ジョン・デヴィット・ワシントン、アダム・ドライヴァーらの見応えある演技。
- スパイク・リーらしく社会派の映画で、ラストに挿入されている映像に言葉を失う。
ハラハラする演出に見事に魅せられ、最後には衝撃を食らう考えさせる作品!
Bohemian Rhapsody『ボヘミアン・ラプソディ』
監督:ブライアン・シンガー(途中で降板。デクスター・フェレッチャーが代行)
- あのQueenの物語!
- 監督の降板や賛否両論の評価を押しのけ、作品賞候補入り!興行的にも大成功。
- この大変な撮影現場で見事フレディ・マーキュリーになりきったラミ・マレックが、主演男優賞を受賞。
個人的には普通だったものの、ラストのライブには一気に心を持って行かれた...。
The Favourite『女王陛下のお気に入り』
監督:ヨルゴス・ランティモス
- ヨルゴス・ランティモス監督が珍しく他の方の脚本で映画を撮った。ヨルゴスワールド炸裂!
- オリヴィア・コールマン、エマ・ストーン、レイチェル・ワイズというオスカー女優3人が紡ぐアンサンブルが半端ない。
- パッと見シンプルなプロットだけども、なんとも言えない気分になる不思議な映画。
Green Book『グリーンブック』
監督:ピーター・ファレリー
- 見事作品賞!今観るべき作品。賛否両論はあったけどね。
- 『メリーに首ったけ』などのファレリー兄弟の兄による作品。
- ヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリという実力派による演技は、見所満載です。
賛成派・否定派の意見はどっちも理解できるけど、特に今観る価値の高い作品。
Roma『ROMA ローマ』
監督:アルフォンソ・キュアロン
- Netflix配給の映画で、『トゥモロー・ワールド』『ゼロ・グラビディ』のアルフォンソ・キュアロン監督が2度目の監督賞に輝く!
- 白黒で美しい映像と音に、映画館で観たものは特に虜に。
- パーソナルな映画ながら、非常に心に響く物語。
映画館でも観て大正解の傑作で、スローペースながら全感覚を刺激されるような作品。
A Star is Born『アリー スター誕生』
監督:ブラッドリー・クーパー
- ブラッドリー・クーパーが監督!?イーストウッドのような演出の巧さ。
- 何度もリメイクされたこの作品。それでもこの評価の高さ。
- レディー・ガガ様による素晴らしい演技と、パフォーマンス。ブラッドリー・クーパーの受けの芝居もさすが。
4つの同名映画の中で一番好きかも。演技も演出も曲も想像以上に最高だった〜。
Vice『バイス』
監督:アダム・マッケイ
- アダム・マッケイ監督らしい映画。ユーモアも効いていて面白い。
- 最も権力を握っていた副大統領、ディック・チェイニーについての映画。政治映画からか、賛否が分かれる。
- クリスチャン・ベールがまたも増量し、素晴らしい演技。エイミー・アダムスも最高でした。
期待以上に面白く、勉強になった。最後に語りかけてくるシーンは心に大きく響いた...。
監督賞
- スパイク・リー(ブラック・クランズマン)
- パヴェウ・パヴリコフスキ(COLD WAR あの歌、2つの心)
- ヨルゴス・ランティモス(女王陛下のお気に入り)
- アルフォンソ・キュアロン(ROMA ローマ)
- アダム・マッケイ(バイス)
こちらは作品賞と違い、受賞発表前からアルフォンソ・キュアロンがとるとの見方が強かったです。
ノミネーションの段階では、
- 『アリー スター誕生』のブラッドリー・クーパーの落選。
- 『COLD WAR あの歌、2つの心』のパヴェウ・パヴリコフスキの逆転候補入り。
というサプライズがありました。
前者は『アルゴ』のベン・アフレックを連想させるサプライズ、後者はオスカーが外国語映画に寛容になっていることの証とも言えるでしょう。
ちなみパヴェウ・パヴリコフスキ監督は、『イーダ』などの監督です。
主演男優賞
- クリスチャン・ベール(バイス)
- ブラッドリー・クーパー(アリー スター誕生)
- ウィレム・デフォー(永遠の門 ゴッホの見た未来)
- ラミ・マレック(ボヘミアン・ラプソディ)
- ヴィゴ・モーテンセン(グリーンブック)
クリスチャン・ベール vs. ラミ・マレック
という状態だったと記憶しています。
重要三賞も仲良く分け合っていました。
最終的には、『ボヘミアン・ラプソディ』の勢いに乗り、ラミ・マレックが見事受賞。
ヴィゴ・モーテンセンもそろそろとっても良い頃だと思うのだけど...
主演女優賞
- ヤリーツァ・アパリシオ(ROMA ローマ)
- グレン・クローズ(天才作家の妻 40年目の真実)
- オリヴィア・コールマン(女王陛下のお気に入り)
- レディー・ガガ(アリー スター誕生)
- メリッサ・マッカーシー(ある女流作家の罪と罰)
演技賞最大のサプライズ!!!
というのも下馬評ではグレン・クローズが最有力だったからです。
何と言ってもグレン・クローズは7度目のノミネートという名優でありながら、なんと受賞はなし。今回こそという状況だったのに...
ただ、オリヴィア・コールマンの演技も最高だったので、これはもう運とタイミングなのかな...。
個人的には大好きなレディー・ガガにとって欲しかった笑
おそらく歌曲賞に票が流れたのでしょう。
ちなみにヤリーツァ・アパリシオは今回が初映画という方で、即ノミネートだなんて夢があるなぁ。
助演男優賞
こちらも結構予想通りの結果に。
マハーシャラ・アリはかなり短いスパンで2度目のオスカー。
それくらい会員に信頼される実力の持ち主ってことですね!
ノミネート段階では、
- 重要三賞全てにノミネートされたティモシー・シャラメの落選。
- 『バイス』のサム・ロックウェルの逆転候補入り。
でしょうか。
特に、『ビューティフル・ボーイ』のティモシー・シャラメの候補漏れはびっくり。
映画自体は重かったけど、演技は最高だったのになぁ...。
助演女優賞
- エイミー・アダムス(バイス)
- マリナ・デ・タヴィラ(ROMA ローマ)
- レジーナ・キング(ビール・ストリートの恋人たち)
- エマ・ストーン(女王陛下のお気に入り)
- レイチェル・ワイズ(女王陛下のお気に入り)
こちらもほぼ予想通り。(実はレジーナ・キングは最も重要な全米俳優組合賞でノミネートすらされていないのだけど、それ以外はほぼ彼女が受賞していたので。)
ここにも無冠の女王、エイミー・アダムス。6度目のノミネートで受賞はなし。
一番好きな女優さんなので、オスカーとる日を楽しみに待ちます。
あとマリナ・デ・タヴィラは特大サプライズ。
『ファースト・マン』のクレア・フォイらを抑えての候補入りは大いに讃えられるべきだと思います。
長編アニメーション賞
- インクレディブル・ファミリー
- 犬ヶ島
- 未来のミライ
- シュガー・ラッシュ:オンライン
- スパイダーマン:スパイダーバース
こちらもほぼ確実に『スパイダーマン:スパイダーバース』という予想でした。
アニメーションでしかできないことをしっかりやっていて、大興奮の大傑作でしたものね!
ディズニーファンとしてはPixarかディズニーアニメーションにもとって欲しかったですけど、この回ばかりは仕方ないでしょう。
日本からは『未来のミライ』が『グリンチ』等を抑えてノミネート。
個人的に、細田守監督の作品の中ではあまり好みの方ではなかったけど、日本人としては嬉しいですね!
国際長編映画賞
こちらは第92回の『パラサイト 半地下の家族』並にガチガチに決まってました。
日本からは是枝監督の『万引き家族』が候補入り。
また、撮影賞にはこのうち『COLD WAR あの歌、2つの心』『Never Look Away』『ROMA ローマ』がノミネートされるなど、かなり外国語映画が強い年だったと言えるでしょう。
『バーニング 劇場版』が候補漏れするくらいですからね。
長編ドキュメンタリー賞
- フリーソロ
- Hale County This Morning, This Evening
- 行き止まりの世界に生まれて
- 父から息子へ 〜戦火の国より〜
- RBG 最強の85才
『フリーソロ』、めちゃくちゃ面白かった。おすすめです。
本命の呼び声の高かった『Won't You Be My Neighbor?』 が、候補すら入れなかったのは衝撃的でした。